歌と歌手にまつわる話

(124) 心のこもった歌(その1) Mr. Wonderful

Yuzuru Sera(1932-2004)

世良 譲といえば、テレビ番組の「サウンド・イン・S」などで、毎週お目にかかるテレビ写りの良いオヤッサンでした。

昔の話ですが。

世良さんが一番好きな歌は”Mr. Wonderful”でした。1955年、George David Weiss,Jerry Bock,Larry Holofcenerの共作です。同名のブロードウェイ・ミュージカルの主題歌で、サミー・デイビスJr.が歌いました。

世良さんは2000年前後ころから、お酒をドクターストップになったりしていました。回りのミュージシャン達は世良さんの機嫌が悪くてかなわないと私にぼやいていたものです。

それ以前は、ライブが終わると銀座の隠れ家のようなバーで皆と一杯やるのです。私も連れて行かれたものです。

2002年夏前に癌が発見されました。しかし、2003年3月には「復帰だ」と言ってステージに戻ってきました。「世良さん、ライブにはみんなで行きますよ」というと、「揃ってくるなら歌いなさい」と品川プリンスホテルClub eXのライブでは、オージーサンズは2度引っ張り出されました。

しかし、2004年2月17日に帰らぬ人となりました。その4ヵ月後、「世良 譲を偲ぶ会」が開催され、北村英治、マーサ三宅、秋満義孝らに素人のオージーサンズが混じって出演することになり、われわれは”Mr. Wonderful”を歌うしかないと、急遽、大原江里子がコーラスアレンジをして、鈴木史子+オージーサンズで堂々と歌いました。

世良ママは「あなた達の歌が、一番心がこもっていたわ」と言ってくれました。プロ・ミュージシャンには悪いのですが、世良ママの言ったことは、その通りだと思います。私達はこの会のためにわざわざ編曲をして、練習を重ねて、ステージの世良さんの遺影に捧げて歌ったのです。

特別な時には、特別の歌を歌わないといけません。それが出来るプロを見たことがありません。普段歌う自分のレパートリーからしか歌えません。(2010/9/11)

⇒ George David Weissのページ


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