ジャズと歴史にまつわる話

ジャズの創始者バディ・ボールデン
(in English, click here)

The Bolden Band in 1905
ジャズの創始者とよばれる男がいます。床屋でゴシップ新聞「ザ・クリケット」の編集発行を兼業とするコルネット吹き、バディ・ボールデンという男です。創始者という意味は、即興演奏をはじめてやりだしたということです。

後列、右から2番目がCharles "Buddy" Bolden(1877-1931)です。

19世紀の終わり頃、彼のコルネットの音の大きさはとてつもない大きさで人々を圧倒したという伝説が残っていますが、残念ながら演奏のレコードは存在しません。強大な肺を持ち10マイル先まで聞こえたという話がまことしやかに伝えられています。

ルイ・アームストロングが5つくらいの頃に、ボールデンのラッパを聞いたことがあったという、ボールデンにまつわる話があります。後になって「あれがボールデンだったのか」とルイが語ったとあります。

ですから伝説的人物としてもの本に紹介されるのみですが、初代の"King of Jazz"ということになっているようです。ただし、あまり素性のよい男ではなかったという記述もあります。

大概、パレードとか公園とか野外でやたらにでかい音でラッパを吹きまくり、女どもを「ギャーギャー」いわせたといいます。あまり女が多くて男は寄りつかなかったというのです。1907年にパレードの途中で発狂し、以降、音楽活動をしていません。

晩年は人知れず20年あまりルイジアナの精神病院で施療生活をおくり1931年に死んだことが、その10年後になって調査されて判明しています。生年月日は1877年という記録が一般的でありますが、中には1868年という書物もあります。 (1998/10)


Buddy Bolden
(1877-1931)

今までボールデンの演奏は残っていないということでしたが、1999年3月にドイツでボールデンのCDが2枚発売されたようです。タイトルは"Buddy Boldens Blues"と"City Of Sounds"です。録音されていたものが掘り出されたのでしょうか。やはり、本人ではありませんでした。前者はいろいろな人が演奏したもの、後者はBuddy Bolden Jr.でした。本当の息子なのか、孫なのかどうかも定かではありません。

「バディ・ボールデンは床屋」という記述は、おそらくどの本にも書かれているのですが、実際のところは「床屋ではない」というのが真相です。これは、ボールデンの未亡人に聞いて確かめられたとの事が報告されています。

当時は、床屋は町の人が寄り集まる場所だったのです。ボールデンの家の近所に、Louis Jonesの床屋があり、ここに始終いたことからそのような話になったものと言われています。

冒頭のBolden Bandの写真をめぐって、左右が逆ではないかという話があります。実際、数知れぬボールデンのページで左右の入れ替わった写真が載っています。この向きが正しいと主張する人の根拠がなかなかふるっています。誰かがギタリストに左利きの格好をしてと頼んだのだというものです。

それにしても、ベースも左利きらしいです。しかし、クラリネットを持っているところを見ると、通常に見えます。そんなわけで真相はよくわかりません。どちらでも大したことではありませんが、奇妙な写真には違いありません。

バディ・ボールデンのお墓はニューオリンズのHolt Cemetaryにあります。

ホルト墓地は市の「無縁墓地」として1879年に出来た墓地で、埋葬されたのは貧乏人ばかりでした。したがって、有名人もいませんし、立派な墓石もありません。

したがって、この墓地で一番の有名人はバディ・ボールデンと言われています。

この記念碑は1996年に建てられたもので、もともとあった墓碑ではありません。

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